変化の最中にいると、迷いや不安はとても現実的で、心に重くのしかかります。
灯り絵『倶利伽羅龍王』は、そんな揺らぎの中にいる人のそばで、静かに支えとなる一枚を目指して制作しました。
倶利伽羅龍王は、古来より「困難に向き合う強さ」や「揺るぎない意志」の象徴として描かれてきたモチーフです。
剣と龍という日本で長く受け継がれてきた象徴表現を組み合わせ、外からの刺激ではなく『自分の内側にある恐れ』を見つめ、それを超えていく力を表現。
しなやかに剣へ絡む龍のラインは、緊張と解放がひとつの画面で同時に存在する感覚を意図しました。
「前へ進みたい気持ち」と「立ち止まってしまう思い」その両方を抱える人に寄り添うためのアートです。
絵の中心には、剣とともに描かれた倶利伽羅龍王。
四隅には、古い図像モチーフをもとにした四明王の記号と文様を配し、画面全体に安定感を与えています。
これは、観る方の視線が自然と中央へ戻りやすくなるように設計した構図で、日々の揺らぎの中で「自分の軸に戻る感覚」をイメージしやすいようにしています。
背景の『龍体文字フトマニ図』は蓮のモチーフと合わせ、火焔(混沌)の中でも美しさや可能性が生まれるという意図で、迷いの中であっても、人が何度でも立て直す力を持っていることを、静かに思い出させる存在として配置しました。
絵や音楽に触れいていると、言葉にはならなくても、ふと自分の中にあった考えや感覚がふと浮かび上がることがあります。
それは、誰かに示された答えではなく、もともと自分が持っていたものを思い出す瞬間なのかもしれません。
灯り絵『倶利伽羅龍王』は、強い力を誇示するためのアートではなく、「自分自身と向き合いながら進む勇気」を取り戻すための、静かな対話のアートとして制作しています。
日常のどこかに「静かに自分を信じる時間」を宿し、これから進む道に小さな確信をもたらす一枚になることを願っています。